卒業生からのメッセージ

博士後期課程

中塚 滋(2016年度 修了)nakatsuka.jpg

2012年3月 京都大学工学部物理工学科 卒業
2014年3月 京都大学大学院工学研究科修士課程材料工学専攻 修了
2017年3月 京都大学大学院工学研究科博士後期課程材料工学専攻 修了
2017年4月 京都大学大学院工学研究科材料工学専攻 特定研究員
2018年4月 サンディスク株式会社 (現ウエスタンデジタル合同会社) 入社 

■経歴と学生時代の体験談
 私は2012年に京都大学工学部物理工学科を卒業後,同大学の大学院工学研究科材料工学専攻に進学し,修士課程を2014年,博士後期課程を2017年に修了しました。学部・大学院では,新規太陽電池材料であるカルコパイライト型化合物ZnSnP₂の基礎研究および太陽電池デバイスへの応用研究に取り組みました。学部時代からエネルギー問題に関心がありこのテーマを選んだのですが,新規材料であるが由に結晶物性の解明・成膜プロセスの構築・太陽電池デバイス化技術の確立など種々のテーマを並行して進めていかなければなりませんでした。また,研究室としても太陽電池の研究テーマを立ち上げて間もなかったということもあり,実験設備を使用するために他大学訪問も頻繁に行いました。実験は上手くいく方が稀で試行錯誤の連続でしたが研究者としての思考力・忍耐力が鍛えられました。研究を始めた当初は学会に行ってもZnSnP₂の認知度は低く,太陽電池としても0.1%にも満たない発電効率でしたが,博士後期課程を終える頃には海外の研究者から「あなたの論文を読んだ。とても体系的で良かった。」といった言葉を掛けてもらう機会が増えました。また論文に掲載できるレベルの変換効率も達成でき,充実した学生時代であったと感じます。

 博士後期課程修了後は,研究員を1年経験しウエスタンデジタル合同会社に就職しました。太陽電池に関連する企業への就職も考えたのですが,既存の太陽電池は成熟した技術が多く,よりチャレンジングな半導体業界へ挑戦することに決めました。弊社はキオクシア株式会社とジョイントベンチャーのパートナーシップを結んでおり,私はその一員としてNAND フラッシュメモリの開発を行っています。月日が経つのは早いもので社会人も6年目に差し掛かったところです。

■現在の職務内容
 私はNAND Flashメモリの製造プロセスの一つであるドライエッチングのチームに所属しており,三重県四日市で日々開発業務に取り組んでいます。NAND フラッシュは,2015年頃までメモリセルを二次元的に配置する2D NANDが主流でした。しかし,メモリセル1つあたりの寸法が10nmオーダーに突入すると微細化が困難になり,現在ではセルを垂直方向に積層する 3D NAND フラッシュが主流になっています。この3D NANDではいかに高積層化を達成するかが記憶密度を上げる鍵となっており,High Aspect Ratio (HAR) Etching が Key Technology になっています。半導体業界は装置価格が非常に高価ということもあり,大学研究室よりも企業が最先端技術開発を行っている場合が多くあります。私は幸運にも,最先端装置を駆使したプロセス開発に配属され,加工技術について日々実験・データ分析を進めています。研究室と比較すると開発のスピード感,スケジュール感が大きく違い慣れるのに苦労しましたが,競合他社よりも優れたプロセス構築を目指して日々奮闘しています。

 昨年の2022年には,装置メーカーの最新機種をデモ評価するため米国のシリコンバレーへ約一か月の間,海外出張を経験しました。次世代の装置選定に関わる重要な評価であり,プレッシャーの掛かる場面も多々ありましたが,貴重な経験となりました。現在会社では,チームリーダーを務めておりメンバーの教育にも力を入れながら自身も日々スキルアップに努める毎日です。半導体は昨今ニュースでも取り上げられるように浮き沈みが激しい業界ですが,京都大学時代に培った研究者として思考力・忍耐力・体力をもって邁進していきたいと思います。最後になりましたが,在学中・卒業後にお世話になった皆様に感謝御礼申し上げます。

本内容は京都大学 工学広報にも掲載されておりますので,併せてご覧ください.

中江 保一(2011年度 修了)nakae

2007年3月 京都大学工学部物理工学科 卒業
2009年3月 京都大学大学院工学研究科修士課程材料工学専攻 修了
2012年3月 京都大学大学院工学研究科博士後期課程材料工学専攻 修了
2012年4月 株式会社 リガク 入社

■現在の職務内容について
入社以来、放射線計測用二次元検出器(X線カメラ)に関する研究開発及びテストを行っています。博士課程中は、実験に使うために、0次元のX線検出器のデジタル信号処理を行ったりしていました。延長線上にある二次元の装置開発に関わっているため、在学中の知見が極めて直接的に役立つ職場に居ます。

■博士学位を取得しようと考えた動機
進学について具体的に考えたのは修士課程への進学時点ですが、父親が大学教員をしていたことも有り、自分も大学に行ってそのうち博士になるものと漠然と思っていました。後期課程について考えた時にも、進学については悩むこと無く決めました。

■後輩へのメッセージ
強力な外部からの要求も無く、目立った書類仕事も無く、自分の課題に没頭して居られる時間はやはり大学特有のものです。特に博士後期課程は、修士で培った能力を活かして自分の独自性を出していける非常に楽しい時期だと思います。
もちろん楽しいことばかりでは有りませんが、研究に興味が湧いているなと感じたら、是非とも博士進学という選択肢を考えてみて欲しいと思います。

より詳しい内容は工学研究科のサイトに掲載されておりますので,是非ご覧ください.

佐野 光(2009年度 修了)Sano.jpg

2004年3月 京都大学工学部物理工学科 卒業
2006年3月 京都大学大学院工学研究科 修士課程材料工学専攻 修了
2009年3月 京都大学大学院工学研究科 博士後期課程材料工学専攻 修了
2009年4月 (独)産業技術総合研究所 特別研究員
2011年4月 (独)産業技術総合研究所 研究員
2015年4月 (国研)産業技術総合研究所 研究員 ※法人名称変更
2015年10月 (国研)産業技術総合研究所 主任研究員
Google Scholar

■現在の職務内容について
リチウムイオン電池の研究を行っています。吉野氏がノーベル化学賞を受賞したことで、最近特に注目を浴びています。また、電気自動車の実用化に向けて、全固体電池を含む、いくつかの新しい電池系の開発が最近盛んになっています。私もこれらの研究開発に取り組んでいます。京都大学の先生方にもこの分野で活躍なさっている方がいます。

■博士学位を取得しようと考えた動機
修士1年生の時に、企業へのインターンシップに参加したリ、周りの同期と話している中で、自分は研究が好きだと実感し、進学を決意しました。

■後輩へのメッセージ
博士課程に進んだからといって将来が約束されているわけではなく、むしろ学部卒や修士卒で民間に就職したほうが良いように思えるかもしれません。ご自身が、どうありたいかを考えてみてください。また、他人は他人、自分は自分ですが、先輩の話は聞かないよりは参考になると思います。是非いろんな人の話を参考にしてください。また、人生の分かれ道は博士課程への進学の時だけでなく、その先にもたくさん待ち受けていますので、その時も是非、人生の先輩の話を参考にしてください。

より詳しい内容は工学研究科のサイトに掲載されておりますので,是非ご覧ください.